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Lost Technology

レトロPC、レトロゲーム、チップチューン等の主に技術的な雑記

MSX互換機の世界(その3)

前回、前々回とパチモン変態マシン続きだったので、今回は少し軌道を修正して比較的お行儀のよい「互換性の高い互換機」を紹介していこう。
ただし、普通のMSXが互換性が高いのは当たり前なので、公式MSXロゴが付いていないマシンに限る。

Phillips NMS-801

http://www.old-computers.com/museum/computer.asp?st=1&c=1084
OLD-COMPUTERS.COM : The Museum

イタリア国内のみで販売された、MSX正規参入メーカーPhilipsによるMSX互換機。
メインRAM32KBのMSX1相当のマシンだが、本体上面に「MSX COMPATIBLE」と書かれており、公式MSXロゴはない。
それもそのはず、このマシンにはMSXの象徴ともいえるカートリッジスロットが搭載されていない。*1
他にもプリンタポートが無かったり*2、SCARTケーブルが直接本体から生えてたり*3といった、なかなかアグレッシブなコストダウンが図られている。
カートリッジスロットが無いのでソフトは当然カセットテープによる供給のみ。販売パッケージにはデータレコーダとジョイスティックが同梱されていたようだ。
これだけでもかなりアレなんだが、このマシンの特筆すべき点は、MSX1なのにMSX-BASIC 3.0が搭載されているということに尽きる。
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いうまでもなく、MSX-BASIC 3.0はMSX2+規格に付随するもので、MSX1ではほとんど意味がない。
実際、VDPはMSX1相当のTMS9929が載っているのでV9958拡張命令は有効にならないし、メインRAM32KBなのでRAMディスク機能も無効である。もちろん日本のマシンではないので漢字BASICも使えない。MSX-BASIC 3.0がMSX1に載っていたとしても、得られるメリットは無いのである。*4
おそらく、実質的にはMSX-BASIC 1.0そのもので、Philipsが勝手に3.0と付けてるだけなんではないかと思う。Microsoft著作権表示もないし。
起動画面からして「PHILIPS MSX version 3.0」なので、MSXではなく「PHILIPS MSX」というMSXによく似た別の何か、という解釈なのではないか。
よくみれば初期ファンクションキーの内容も標準とは違うので*5、もしかしたらファンクションキー設定が3.0という可能性もある。
表示が怪しい以外はMSX-BASIC 1.0と完全な互換性があるので、普通にソフトウェアコンパチブルといえばいいと思うんだが公式参入メーカーが「消防署の方から来ました」的な商法をしていたというのはなかなか味わい深い。

FRAEL BRUC 100

FRAEL BRUC 100

これもイタリア製。
フィレンツェのFRAELというコンピュータ販売会社(現存)が、学校教育用にいくつかの地域の学校に納入したものらしい。
ハードウェア的にはMSX1の仕様を満たしており、MSX仕様のカートリッジスロットとBIOSが搭載されているため、MSX1のカートリッジソフトがそのまま動いてしまうが、公式MSXロゴはついていない。
BIOSMSXそのものであるものの、BASICが「MCL extended BASIC v1.1」という、MSX-BASIC 1.0をカスタマイズしたBASICが搭載されている。
起動時のメッセージや、初期カラー、ファンクションキー等が変更されているほか、ブリンクカーソル、ワードジャンプ等、エディット画面の操作性が向上している。
導入時期や地域によって内蔵ソフトにさまざまなバージョン違いがあるらしく、本場イタリアでも全容解明には至っていないとか。

Daewoo Zemmixシリーズ

Daewoo Zemmix | Video Game Console Library
Daewoo Zemmix - Ultimate Console Database


一部でお待ちかねの韓国製MSX互換機。
Daewoo(大宇)は一応韓国における正規ライセンシーである。
正規のMSXパソコンを販売する一方、ZemmixというブランドでMSX互換のゲーム機を発売していた。*6
Zemmixにはさまざまなモデルがあるが、キーボードが使用できないことからMSX規格を満たせないため、公式MSXロゴはない。

MSX Zone

このうち、Zemmix SuperboyはMSX(1)内蔵のテレビである。日本でもゼネラルがMSX内蔵テレビ「PAXON」を発売していたが、PAXONはオプションとは言えキーボードが接続可能であったため、公式MSXロゴが付いている。
初代Zemmixから、Zemmix V*7までがMSX1互換。
Zemmix Super Vになると、オプションでキーボードと拡張スロット*8が用意されているため、公式MSXロゴが付いてしまっている。*9
最終モデルのZemmix Turboは、「日本以外で唯一発売されたMSX2+」などと紹介されることもあるように、MSX2+相当のVDPとBIOSを搭載している。VDPとメインBIOS以外の、2+から必須になった機能*10は一切搭載されていないが、それを必要とするソフトもほとんど無いのであまり困らなかった物と思われる*11

Daewooについては、MSX準拠マシンについても面白いのがいっぱいあるので、需要が多いようなら機会を改めて紹介したい。

その4に続くかも?

*1:規格上は最低1つのカートリッジスロットが必要。

*2:プリンタポートはオプション。

*3:一応RF端子もある。SCARTというのは日本におけるRGB21p端子のもとになった映像信号伝送規格。日本のRGB21pと端子形状は同じだが互換性はない。本家SCARTはデイジーチェーンが可能だったりしていろいろ高機能。

*4:MSX BASICのバージョンアップは、規格バージョンアップに伴う標準機能の拡張にのみ追随して行われており、下位互換部分については互換性維持のためバグフィックスすらされていない。

*5:「run"」「bload"」「cload」「load"」「run」という、プログラム入力のことをまるで考慮していない設定が潔い。

*6:ZemmixというのはMSX互換機に限らずDaewoo製のゲームコンソール全般のブランドであるため、後にはPCエンジン互換機も発売されたが、ここではもちろんMSX互換機のみを対象とする。

*7:韓国では、Zemmixといえばこのホームベース型、というくらい象徴的な意匠になったらしい。のちに有志によってこのホームベース型を模したZemmix互換機が発売された。

*8:スロット端子の未使用ピンを利用して、1スロットに2スロット分の信号が出ていた。三菱のML-10と同様の拡張方法。

*9:オプションのキーボードはZeminaというサードパーティが販売していたが、この会社が結構黒くていろいろ面白いネタがあるので別の機会にでも。

*10:漢字ROMとかメモリマッパとか

*11:そもそもMSX2+専用ソフトが…