Lost Technology

レトロPC、レトロゲーム、チップチューン等の主に技術的な雑記

YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(スペック編)

2011年に発表されていたヤマハのYMF825(SD-1)というFM音源チップが、電子工作向けモジュールとして商品化されました。
それに合わせて、パラメータのリファレンスなどが公開されましたが、かつてのパソコンやゲーム機に搭載されていたFM音源チップとはだいぶ素性が違うので、戸惑っている人も多いと思います。

シリーズもくじ
YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(スペック編) - Lost Technology
YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(音作り編) - Lost Technology
YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(発音制御編) - Lost Technology

※この記事は、既にOPN/OPM/OPLなどパソコン向けFM音源の音色パラメータや制御パラメータについての知識がある人向けに書いています。
www.dtmstation.com
YMF825Board紹介

基本スペック

秋月電子の通販ページに日本語のデータシートがあります。ハードウェア面の仕様はそこを見ればだいたい書いてあります。
akizukidenshi.com

YMF825は4オペ16ポリのFM音源。有り体に言うと、携帯電話向けFM音源だったYMU762(MA-3)やYMU765(MA-5)のFM音源部分を切り出した物です。
音色パラメータについてはMA-3/5とほぼ同一なので、MA-3/5時代のガラケー着メロをやったことがある人にとっては馴染みのある音源だと思います。

MA-3/5との違い

・MA-3/5では、2OP使用のFM32モードと4OP使用のFM16モードがありますが、SD-1はFM16モードのみです。(たぶん)
・MA-3/5はPCM音源も内蔵していますが、SD-1はFMのみです。
・MA-3/5は波形メモリを持っていて、FMオペレータの原波形として使用する事ができますが、SD-1にはありません。(たぶん)

音色パラメータ

github.com

携帯電話向けFM音源はOPL3の延長線上にあり、YMU759(MA-2)までは音色パラメータはOPL3の4OPモードと互換性がありました。
MA-3/5では、基本波形の種類が増えたり、FMアルゴリズムが整理されるなど、OPL3の不満点を解消する方向で拡張されています。
前述の通り、音作りに関してはMA-3/5とほぼ同じなので、ガラケー着メロの情報やツールが役に立ちます。
かつてヤマハガラケー着メロ用に公開していたMA-5用のオーサリングツールがWebArchiveに残っています。
SMAF / ツール / ダウンロード

ここにあるATS-MA5-SMAFを使えば、実際にどんな音が作れるか鳴らして確認することができます。

発音制御

github.com

SD-1は16音ポリフォニックに対して全て異なる音色を割り当てることができます。
ただし、OPN/OPM/OPLなどと違い、発音チャンネルと音色レジスタは独立しています。
あらかじめ音色レジスタテーブルに音色を設定しておいて、各チャンネルの発音時に音色レジスタのテーブル番号を指定する方式になっています。
そのため、発音中に音色パラメータをダイナミックに変更することはできません。制御としてはOPLL系に似ています。
OPLL系を使用したことがある人は、OPLLのROM音色を非リアルタイムで可変にできるような物を想像すると把握しやすいと思います。

その他の機能

MA-3/5にもありますが、SD-1はシーケンサーも内蔵していて、シーケンスデータをぶち込んで自動演奏することもできます。
ただ、今回はなぜかシーケンサーのコマンドリファレンス等は公開されていません。
シーケンサーがMA-3/5と同じであれば、SMAFを流し込んで演奏するプレイヤーは簡単に作れそうです。


次回は音色パラメータを個別に見ていきたいと思います。