Lost Technology

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YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(音作り編)

前項で書いたとおり、SD-1はMA-3/5のFM部分とほぼ同じです。
ガラケー着メロやってた人は、俺の駄文など読まずとも音作りできることと思います。

ここでは、「パソコン向けFM音源についてはある程度知ってるけど携帯電話向けFM音源は知らない」という人向けに、パソコン向けFM音源との違いを軸にして解説していきたいと思います。

シリーズもくじ
YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(スペック編) - Lost Technology
YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(音作り編) - Lost Technology
YMF825(SD-1)ざっくりまとめ(発音制御編) - Lost Technology


※この記事はパソコン向けFM音源(OPN/OPM/OPL等)の音色や制御についての知識がある人向けに書いています。
音色パラメータの詳細は、前項で紹介したATS-MA5-SMAFのマニュアルがとてもわかりやすいので、ドキュメントだけでも手元に置いておくことを推奨します。
SMAF / ツール / ダウンロード

アルゴリズム

まずはSD-1のアルゴリズムをOPL3やOPNと比較してみましょう。

左からSD-1、OPL3、OPN/OPMのアルゴリズムです。

OPL3で構成可能なアルゴリズム(2OP×2を含む)から重複分(OPL3のAL2/3/5/9/10)を取り除いて、OPN/OPMにあったダブル変調モード(SD-1のAL3)が追加された感じです。
OPL3では2OP×2とすることでFBオペレータを2つにすることができましたが、SD-1でもAL2/5で同じことができます。おそらく内部的にはOPL3と同様2OP×2にしているのでしょう。
ただし、2並+2直モード(OPL3のAL7/9/10)はFBオペレータが1つの組み合わせ(OPL3のAL7)だけが残されました。2並+2直なので、SD-1ではAL0とAL1で2CH重ねれば代替できます。

ダブル変調モードが追加されたことで、OPN/OPMから音色がだいぶ移植しやすくなったのではないかと思います。
OPN/OPMにあってSD-1に無いアルゴリズムは、ダブル変調シリアル3連モード(AL1)、ダブル変調モード2(AL3)、共通変調3パラレルモード(AL5)の3つですが、AL1/3は使用頻度はあまり高くなく、オペレータの波形を選べば他のアルゴリズム(SD-1のAL3/4など)で似た音は出せると思います。OPNのAL5については、SD-1ではAL0とAL5で2CH重ねれば代替できます。

エンベロープ

各オペレータ毎に、AR/DR/SL/SR/RRで指定します。分解能がすべて4bitである以外は、パソコン向けFM音源とまったく変わりません。
OPL系ではSRとRRのレジスタが共用されていて、Key-On/OffとEG Typeで切り替えることができましたが、前項の通りSD-1では発音中にエンベロープレジスタを変更できないので、SRとRRが別レジスタとなったものと思われます。
トータルレベルはOPL系と同じ6bitですが、音量カーブとレンジがまるで違うので、音色の移植には耳と手による調整が必要と思います。

波形選択

SD-1はオペレータの原波形として正弦波以外も使用する事ができます。パソコン向けFM音源ではOPL2から導入されていて、OPL3では8種類の波形が使用できます。
また、楽器向けFM音源であるOPZにも同様の機能があるので、波形のバリエーションをこれらと比較してみたいと思います。

左から、SD-1、OPL3、OPZの波形選択一覧です。

見ての通り、大幅に波形が増えていますが、WS0~7はOPL3と同じであることが分かると思います。
WS8~13は、WS0~5の振幅をクリップしたような波形です。WS16~21に三角波、WS24~29にノコギリ波のバリエーションが入っています。
三角波のバリエーションはOPZにもあるので、OPZ用の音色の移植もしやすそうです。
WS14/22/30は矩形波のバリエーションですが、モジュレータ波形にはあまり使わないと思います。WS15/23/31はMA-3/5では波形メモリ(任意波形)ですが、SD-1では無音です。

周波数

MLはOPLと同仕様で、11倍/13倍/14倍がありません。が、OPNとほぼ同仕様のDTが追加されています。
オペレータ周波数に関連するパラメータは、OPLとOPNのハイブリッドといった感じです。

というわけで、音色パラメータのざっくり解説は以上です。
次回は、実際の発音制御について書く予定です。が、実機検証しながらなのでちょっと時間開きます。