Lost Technology

レトロPC、レトロゲーム、チップチューン等の主に技術的な雑記

MSX互換機の世界(その5)三菱テレコムステーション

前回から約1年半ぶりの更新。
訓練されたMSXユーザーなら「三菱テレコムステーション」というサブタイトルから「受話器付きの黒いやつ」を容易に連想していただけるものと思う。
実はアレ以外にもバリエーションがあったんである。
三菱テレコムステーションといえば、最も有名なのは冒頭でも言及した「受話器付きの黒いやつ」ことML-TS2Hではなかろうか。
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この機種は一般販売もされたのでそれなりに世に出回っていて時々ヤフオクでも見かける。
モデム内蔵で受話器が付いている*1くらいで中身は普通(?)のMSX2である。
スペック等はここが詳しい。一応このエントリは「MSX互換機の世界」シリーズなので、MSXマークが付いてる普通のMSXはさらっと流す。

ここからが本題。
実は、一般販売されたML-TS2Hの前に、MSX1ベースで同様のマシンが存在したのである。
www.g-mark.org

白を基調としたいかにもオフィス端末っぽい雰囲気ではあるが、筐体デザインは後のML-TS2Hとほぼ同一。
ただひとつだけ違うのが、中身がMSX1相当というところ。

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なぜかこの機体にはMSXマークが付いていない。なんで付いてないのかは不明*2だが、MSXマークが付いてなくて実質MSXである以上はMSX互換機として扱うほかあるまい(強弁)。

このML-TS1は一般販売はされなかったとあるが、ミサワVAN*3が三菱からOEM供給を受けて自社システムのネットワーク端末として販売していたようだ*4
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なお、当時ミサワVANがどんなサービスを展開していたかというのがこの辺にちょろっと書かれている。天気予報サービスとな…
it.impressbm.co.jp

そして今回の目玉。
たまたま目にしたこのTWから、上記2機種のほかにもディスク搭載型の上位機種の存在を知ったので調べてみた。

これも一般には市販されていなかったようだが、ネット通販の広告から商品写真を発掘。
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2017/4/21:高解像度のテレフォンカード画像が発掘されたので追記。
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FDD1基搭載のML-TS100と2基搭載のML-TS100M2というモデルがあったようだ。
さらに、先述のTWから辿って三菱の技報に当たったところ、詳細なスペックが出てきた。
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なんと、メインCPUとしてHD64180を搭載している。
それも、HC-90/95のようなデュアルCPU構成ではなく64180単独でMSX2相当の機能を担当しているように見える。
Z80以外のCPU*5だけで構成されたMSXというのは極めて珍しい。
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ハードウェアブロック図を見ると、「通信部*6」とは64180の内蔵シリアルポートで繋がっている。これも極めて珍しい。

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ソフトウェア構成図を見ると、MSX-DOSの上に「テレコムOS」というマルチタスクOSを構成していたようだ。
これが、


の事だろうと思われる。

ML-TS100にもMSXマークは付いていないが、実際のところ64180@6.144MHzでMSXのソフトがどれくらい動いたのか大変興味深い。
いつか実機が発掘されて解析される日は来るだろうか。

*1:受話器無しモデルもある

*2:一部規格に準拠していないとか、単にライセンス料がもったいないとか、ブランド戦略的に隠しておきたかったとかいろいろ可能性は考えられる。

*3:ミサワホームの子会社。今はもう無い。

*4:CX-5という名前だがもちろんヤマハMSXとは関係ない。紛らわしくて困る。

*5:Z80コアを統合したASICやFPGAを除く。

*6:内蔵のインテリジェントモデム。